樹木医 松井裕之の樹木相談室
名木、保存木、天然記念物をめぐる

平松のウツクシマツ

菩提寺パーキングエリアのウツクシマツ

ここは名神高速道路の登り線にあるパーキングエリアで菩提寺パーキングエリア。

そのパーキングエリアにある丘の上に一際目立つ松の木があります。

ウツクシマツです。

菩提寺パーキングエリアのウツクシマツ

このウツクシマツは最初からここにあったのではなく、移植されてきたものです。

ウツクシマツとタギョウショウ

ウツクシマツという名前はあまり知らないという方がいるかもしれません。

ウツクシマツは、主幹がなくて、根元から多数の支幹が放射状に広がっています。逆さにした折りたたみ傘のような独特な樹形を持つアカマツの変種です。

なお、ウツクシマツと同じアカマツの品種には、タギョウショウという似たものがあります。

タギョウショウは、ウツクシマツとは異なり、古くからつぎ木で増殖されてきたと言われています。そのため広く広まり、園芸品種として普及しており、庭木としても植えられています。タギョウショウはウツクシマツと同様に根元から多数の幹に分かれますが、樹高はウツクシマツよりもかなり低く、概ね5m以下です。

ウツクシマツの伝説

この辺りは、昔からウツクシマツがあると知られていました。

ウツクシマツを御神木として祭っている京都の松尾大社に残る伝説では、平安時代のはじめ頃からこの辺りにウツクシマツがあったとされている。

江戸時代では、東海道を行き交う人々にとって松の名所として知られていました。「うつくし松」は、歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』にも描かれています。その絵には、複数の幹が放射状に分かれる特徴的なウツクシマツの姿が表現されています。このように昔からこの地域のウツクシマツは大切にされてきました。

大正時代にはウツクシマツの自生地として、当時の村の名前である三雲村(みくもむら)にちなんで三雲村美松自生地という名称で国の天然記念物に指定されました。その後、現在の指定名である平松のウツクシマツ自生地へと名称が変更されています。

平松のウツクシマツ自生地

この松が自生しているのは日本でここ「滋賀県湖南市平松」だけという非常に貴重なもので、ウツクシマツの群生地として国の天然記念物にも指定されています。大きなものでは樹齢300年、樹高20m、幹周りが4mほどに達し、ウツクシマツの名前の通り美しく、見応えのある松です。

菩提寺パーキングエリアのウツクシマツ

危ういウツクシマツ自生地

平安の昔から私たちが大切にしてきた、ウツクシマツですが近年になって深刻なことになってきています。

気候や社会環境の変化、さらにマツクイムシの被害拡大により、自生地内のウツクシマツが枯れ、大幅に減少しています。そのため、平松のウツクシマツ自生地には深刻な影響が及んでおり、その価値を保全し継承することが重要な課題となっています。このままではウツクシマツ自生地の保全や管理が難しくなり、最終的にはウツクシマツが消滅する危機的な状況に陥る可能性もあるといわれています。

菩提寺パーキングエリアのウツクシマツDSC_3968_TEMP

この名神高速道路の菩提寺パーキングエリア上り線にあるウツクシマツは、1962年(昭和37年)に地外天然記念物指定地外より移植されたものです。

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