松と菌根菌の関係|樹木医が解説する松が元気を失う本当の理由
「剪定もちゃんとしているし、水やりや肥料も欠かしていないのに、なぜか松の元気がない……」
「葉が黄色っぽくなり、新芽の伸びも悪くて枯れてしまいそう……」
大切に育ててきた庭や境内の松が弱っていく姿を見るのは、本当に辛いものですよね。
実は、松が元気を失う原因は、目に見える「葉」や「枝」ではなく、目に見えない「土の中」に潜んでいることが非常に多くあります。
そして、その鍵を握っているのが、松と切っても切れないパートナーである「菌根菌(きんこんきん)」という土の中の菌(キノコやカビの仲間)です。
松は、この菌根菌と“手を取り合う”ことで、はじめて過酷な環境でも青々と力強く生きることができます。つまり、菌根菌が住みにくい土壌になると、松はどれだけ表面上のケアをしてもどんどん弱ってしまうのです。
この記事では、樹木医の視点から、
- 松と菌根菌の切っても切れない「共生関係」の仕組み
- なぜ菌根菌が減り、松が元気を失ってしまうのか(よくある原因)
- 松の元気を取り戻すための正しい土壌改善のアプローチ
を分かりやすく解説します。
「もう手遅れかもしれない」と諦める前に、まずは松の足元(土の中)で何が起きているのかを一緒に紐解いていきましょう。

解説は、樹木医の松井裕之です。菌根菌の役割をやさしく解説します。治療(菌根菌接種)は別記事で詳述します。
そもそも「菌根菌(キンコンキン)」とは?
菌根菌とは、カビやキノコの仲間で、植物の根にくっついて生きている微生物です。
植物からは生きるための栄養(光合成産物)をもらう代わりに、土の広範囲から水分や肥料分(窒素やリンなど)を効率よく集めて植物に与えています。互いに助け合う、究極の「共生関係」です。
ちなみに、松にくっつく菌根菌の代表格といえば、あの「マツタケ」です。

- 松:日光を浴びて作った「光合成産物(砂糖のようなエネルギー)」を菌に与える。
- 菌根菌:根の代わりに広範囲から「水分やリン酸などの栄養」を集めて松に届ける。
過酷な環境でも松が生き残れる理由
海岸の絶壁や岩場など、「土も栄養もない場所」で立派に育っている松を見たことはありませんか?あるいは、何も栄養がなさそうな白い砂浜にある「白砂青松」の松林。

他の木が生えられないような厳しい場所で松だけが育つことができる秘密こそ、この相棒=菌根菌の存在です。
- 水・肥料のかき集め:岩場のような貧栄養な場所から水分や栄養を強力に集めます。
- 根を守る「防護服」:根を覆うように付着し、厳しい寒さや病原菌の攻撃から根を守ります。
菌根菌という「防護服」を着ているからこそ、松は競争のない厳しい環境でも生き抜くことができるのです。
庭の松から菌根菌がいなくなる?「肥料のやりすぎ」の罠
実は、松は「肥料が多すぎる環境」が苦手です。
土の中に肥料分が多すぎると、病原菌が発生しやすくなるだけでなく、相棒である菌根菌がいなくなってしまいます。
防護服(菌根菌)を失った根はとても傷みやすくなり、せっかく伸びた新しい細根が1年ほどで黒くなって死んでしまうこともあります。
庭の松が抱えるストレス
- 毎年行われる厳しい剪定(みどり摘み・葉むしりなど)
- 慣習的な「寒肥(かんごえ)」
- 人が歩くことによる土の踏み固め
本来「痩せた土」で菌根菌とタッグを組んで育つ松にとって、庭の環境は根が痛みやすい条件が揃っています。
まとめ:肥料をあげる前に「根の環境」を見直そう
「葉色が悪い」「葉の量が減った」といった症状は、地中の細い根が傷み、菌根菌を失っているサインです。
弱った松に必要なのは、追加の肥料ではなく「菌根菌が住める健全な根の環境を取り戻すこと」です。
菌根菌接種工法による松の治療
菌根菌を使うことで松を治療する「菌根菌接種工法」
当相談室では、この菌根菌の力を活用した専門的な治療・根系改善を行っています。具体的な治療法やご依頼の流れについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
👉 【関連記事】 弱った庭松を根本から蘇らせる!当相談室が実践する「菌根菌(キンコンキン)接種工法」とは?👇
参考ホームページ
樹木医のホームページ⇒http://www.matui-jyumokui.com/
樹木医に相談・トップページ⇒https://sdgs-greening.com/