神奈川県小田原市にある「清閑亭」は、明治の気風を今に伝える数寄屋造りの名建築として知られています。しかし、その本当の魅力は建物だけではありません。建築と見事に調和し、四季折々の表情を見せる豊かな庭園こそが、清閑亭の美しさを完成させているのです。

本記事では、樹木医の視点から、清閑亭の庭園に息づく木々の魅力や、名建築を引き立てる造園美の秘密を分かりやすく解説します。一歩踏み込んだ大人の小田原散策へ、一緒に出かけてみませんか。

清閑亭(せいかんてい) 小田原市

小田原にきました。

小田原城を見学した後、歩いて5分ほどのところに清閑亭(せいかんてい)というところがあります。

清閑亭(せいかんてい)は、神奈川県小田原市にある歴史的建造物であり、現在は日本料理店としても親しまれている名建築です。

巨大なクスがお出迎え

ここが清閑亭。大きな飛び石がかっこいいですね。

清閑亭の主な特徴や歴史は以下の通りです。

清閑亭の歴史と建築の価値

  • 黒田長成の別邸:豊臣秀吉の家臣=黒田官兵の子孫である衛黒田長成(くろだ ながしげ)の別邸。
  • 数寄屋風書院造り:平屋造りと2階建て部分からなる優れた数寄屋風書院造りの建物です。晴れた日には2階から真鶴半島や大島、相模湾を一望することができます。
  • 国登録有形文化財:建築としての歴史的・文化的価値が非常に高く、国の登録有形文化財に指定されています。

さてお庭を見てみましょう!

清閑亭の庭園 数寄屋建築と芝のコントラスト

お庭に出て見ることができました。

松が主木に据えています。和洋折衷の開放的な芝生のお庭です。明治のお庭ですね。

清閑亭を建てたは衛黒田長成書道、詩文、茶の湯、和歌に深く通じた風流人でありながら、イギリスのケンブリッジ大学への留学を経験するなど、当時最先端の国際感覚を身につけたエリートでもありました。

このお庭も伝統的な風流に目新しい欧風を取り入れた衛黒田長成らしいお庭ではないでしょうか。

海を背景にした松は日本の原風景とも言えますが、芝生に落ちる松の影の美しさを保つためにきちんと定期的な手入れがされています。数寄屋建築の繊細な軒のラインと、手入れの行き届いた松の力強さが、絶妙なコントラストを生み出しています。

蹲踞です。ここで手を清め、お茶室に臨みます。

この沓脱石からお茶室に入る設定のようです。

それにしても、大きな良い沓脱石ですね。聞くとこよによると、近くを流れる早川とい川から採取してきたそうです。

部屋の中から見たお庭です。

数寄屋建築からの庭園風景

存在感のある松ですね。松を主体とした芝庭ですが、野村モミジがあるのが憎い演出です。

本来は、ここから相模湾が見えますが、植栽が邪魔して見えません。お隣の木が大きくなりすぎているのです。

計算された「壮大な海の借景」

清閑亭の庭園の大きな特徴は、小田原城の三の丸外郭土塁(どるい)という歴史的な遺構の上に造られている点です。 高低差のある斜面地をそのまま庭の基盤として利用しているため、見晴らしが良いのが特徴です。

庭園の南側は大きく開け、眼下に相模湾、遠くに真鶴半島や箱根の山々(石垣山など)を望むことができます。この雄大な景色を庭の一部として取り込む「借景(しゃっけい)」が清閑亭の真骨頂です。

この建物から見る景色は、本来手前から見て、モミジ、大きな松があって、低木が配してあり庭園としての奥行感を出している。その低木の向こうには壮大な海の「借景」になっています。緻密に計算されています。低木の向こうは、何もなく海の景色が見えるのです。

松をはじめその他の植物もこの借景の効果を最大限生かせるような管理をしているようです。

2階に上がって見ます。

ここからは、松越しに相模湾が見えてよい景色です。この松の高さは計算されているようです。しかし、2階からの角度であると下の民家が視界に入ってしまいます。やはり、1階からお庭の1部としての相模湾が見たいですね。

2階からお庭をみる。芝生がきれいに手入れされており、野村モミジの赤も良いアクセントとなっている。

まとめ:建築と庭園が織りなす、清閑亭の「生きた美しさ」を体感しよう

小田原の名建築「清閑亭」の魅力は、歴史ある数寄屋造りの建物と、それを引き立てる庭園の木々が一体となって生み出されている点にあります。

樹木医の視点で現地を紐解くと、ただ「緑が綺麗」というだけでなく、先人たちの緻密な計算や、今も木々を守り続ける手入れの息吹が随所に感じられます。季節ごとに異なる表情を見せる清閑亭は、訪れるたびに新しい発見をくれる場所です。

小田原を訪れた際は、ぜひ少し足を延ばして、建物の中から広がる美しい借景と、歴史をサバイバルしてきた木々の生命力を肌で感じてみてください。

お洒落なカフェ

清閑亭の中にお洒落なカフェがあります。

和服姿の店員さんが注文を聞いてくれます。

コーヒーとプリンのセットです。

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