バンコクの日本庭園を樹木医が解説!松が育たない熱帯気候の植栽工夫とは
タイ・バンコクに、これほど本格的な日本庭園があるのをご存じでしょうか。
ラーマ9世公園の広大な敷地の中に、池泉回遊式の庭園や石組、灯籠、築山まで丁寧に再現された“日本の風景”が広がっていました。 熱帯の気候の中でどのように日本庭園が維持されているのか、現地ならではの工夫や植栽の違いも見えてきます。 海外に造られた日本庭園の魅力と、文化としての庭園の伝わり方を、樹木医の視点でご紹介します。
ラーマ9世公園

ここはラーマ9世公園というバンコクで1番大きな公園といことです。
バンコクの気候は熱帯モンスーン気候で年間の平均気温が28度だそうで、日本の夏のような気候が1年中続くようなイメージです。公園には、熱帯独特の木があったり、


公園内には普通にオオトカゲがいたりします。人なれしているのか、近くまで寄っても逃げません。また、リスも木の上や芝の上を走っていました。
ラーマ9世
ラーマ9世は1946年から2016年まで在位されており長くしかも最近まで在位されていました。
親日家だったみたいで、日本の皇室とも公式にあるいは非公式によく交流があったという事です。日本車やが楽器のサックスホーン、キャノンの一眼レフなど日本製品を良く愛用されていたみたいで、オニズカタイガーを履いていらしたら、国民が反応して国民的人気ブランドになったとか、、、。
公園には、ラーマ9世と思われる大きな絵がありました。

真ん中にラーマ9世ご夫妻でしょうか?右側に国民に寄り添う姿、左側には木を植える様子が描かれています。きっとラーマ9世は自然や緑が好きだったのでしょう。この公園もきっとそのような理由で作られたような気がします。
ラーマ9世公園の庭園ゾーン
ラーマ9世公園には、大きく3つのゾーンがあります。アクティビティーゾーン、植物園ゾーン、庭園ゾーンです。庭園ゾーンには世界の庭園があります。
表示が少ないのでどこの国の庭園はわかりませんが、

このような乾燥地帯の庭園や左右対称のヨーローッパの庭園などがあります。

そして、日本庭園はほかに比べ大きな敷地で設けられています。
タイの日本庭園
これがタイにある日本庭園です。

大きな池に石組みがあり灯篭、層塔が設置し築山もありる立派なお庭です。
回遊式庭園
このお庭の特徴は池泉回遊式庭園とされています。
回遊式庭園(かいゆうしきていえん)とは、簡単に言うと「歩きながら、次々に変わる景色を楽しむ、テーマパークのようなお庭」です。「一歩進むごとに、絵巻物をめくるように景色がガラリと変わる」仕掛けになっている庭の事です。
このお庭は回遊式庭園らしくあらゆる方向から楽しめるようになっています。
ただ、他のエリアの添景物が視界にノイズとして入ってきて来るのが少し残念です。それらノイズを隠し、借景にするところはしっかりと見せると、もっといい庭園になるのかと思います。

松の不在の日本庭園!樹木医が解説
このような立派な日本庭園ですが、日本庭園の定番の木=「庭木の王様」=松が不在です。
本当は松を使いたかったと思うのですが、タイでは松は育ちにくい為でしょう。
松が育ちにく理由に以下のことが考えられます。
- 松は冬の寒さを経験することが大切で、常夏のタイでは休眠できないため。
- 松は乾燥気味で水はけの良い土壌を好みます。タイの激しいスコールや、雨期の長雨で土が過湿状態になる。
- バンコクのあたりの土壌は、元々海だった場所が干上がってできたため、土中の硫黄成分が空気に触れて酸化し、硫酸に変化することでpHが4.0近くまで激しく下がることがあります。松は、酸性を好む樹木ですが、pHが4.0ぐらい極端になると話は別です。
- 詳しく調べていないですが、日本にはない病気や害虫がいて免疫がない。
このような理由で松は断念されたと想像されます。
代わりに「日本」を連想させる「シダレヤナギ」を主木に採用しています。
シダレヤナギは水分を非常に好む植物であるため、タイの激しいスコールや粘土質の土壌でも根腐れしにくく、熱帯の環境への適応力はかなり高いです。バンコクの平地でも水辺に植えれば問題なく旺盛に成長します。
石組みと護岸
石組みが組まれています。セオリーの通り5石で表現されています。

池に沈める石や陸上の景石と組み合わせています。後ろのシダレヤナギが石組みを障る演出です。
灯篭の据え方のセオリー

池の中にポツンとある灯篭。そして、水面に灯篭が写し出されています。
色々な意味で結構心に残ります。
本来灯篭には、空間を照らすという実用的な意味と 景色を引き締める添景物の意味があります。そのことから、灯篭を据える場所は、ある程度のセオリーがあります。
1 通路の分岐点: 園路や飛び石が二又に分かれる場所。夜間に客人が迷わないように照らす意味があります。
2 水際: 水面に灯篭の光や影が映る風情を楽しみます。特に「雪見灯篭」などは水際に据えるのが定番です。
3 変化の大きい場所: 蹲踞(つくばい=手を洗う場所)の脇や、庭の出入り口(中門)の近くなど、人が立ち止まって動作を行う場所に据えられます。
この中でいくと水際という事になりますが、水際の灯篭は 通常のここで使われるような高い柱(竿)を持つ灯篭ではなく、背が低く、横に広がる「大きな笠」と、それを支える曲線を描いた脚が特徴の「雪見灯篭」を使います。
雪見灯篭を水際に据える際、「4本のうち1本か2本の脚を、池の中に組んだ『水受石(みずうけいし)』の上に落とす」という技法、あるいは、池の護岸(ゴタ石や崩れ石積)のキワに、ギリギリ片脚を引っ掛けるように水面を跨ぐ(またぐ)演出をします。 これにより、灯篭が陸から水面へと「せり出している」ような浮遊感が生まれ、陸と水という異なる空間の架け橋になります。
ただ、このタイの池の中に入った灯篭は、水面を「鏡」として利用して、風によって水面が揺れると、反射した光もユラユラと不規則に揺らぐ日本庭園ならではの演出を再現しています。この「動(水面の揺らぎ)」と「静(佇む灯篭)」の対比がタイで見れるのはうれしいですね。
樹木医が見る庭園管理の方法の違い

また、池泉回遊式庭園のほかに石組と植栽で作られている日本庭園もありました。
よく管理されていますが、この管理方法は、どちらかと言えば西洋的な植栽管理と言えます。それは刈込の方法でわかります。
先程の池の写真にもありましたが、自然を「支配・管理」する思想。植物を動物の形やツリーの形や立方体など、「自然界には絶対に存在しない形」に変形させることで、人間の幾何学的知性をしめしたような刈込です。
日本の刈込は、自然を「凝縮・抽象化」する思想。一見すると丸い人工的な形ですが、その本質は「遥か遠くにある雄大な山並みや波を抽象化した形」あるいは、石の硬さをやわらげる役割を持たせています。つまり、究極の自然を表現するために、あえて人工の手を加えている感じです。
しかし、石組みの硬さと植栽の柔らかさを組み合わせ、対比させる日本庭園の良さを取り入れている様子が見て取れて良かったです。
ラーマ9世もこれら日本庭園をゆっくりみられていたのでしょうか?
そのほか少しお離れたとことに、このような風景がありました。

これは、警備の方に教えてもらったもですが、日本の風景を表現してものだそうです。
欄干の橋が見えますね。
日本の風景にある添景物をど真ん中に直球でもって来るのが、海外にある日本庭園の特徴であるのかなと思っていたところ、前にある木の枝で透かして欄干を見せるテクニックを見せているところが、うまく日本庭園の考え方を取り入れていると感じました。
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