会津三名園の隠れた名庭・可月亭庭園に息づく樹木と石組の美
皆さん、こんにちは。樹木医×植木屋の松井裕之です.
今回は少し足を延ばして、みちのくの歴史が息づく福島県会津若松市へ。 「会津三庭園(会津三名園)」の1つとして名高い、可月亭(かげつてい)庭園を訪ねました。
大名庭園である「御薬園」と並び称されるこの庭園ですが、実は江戸時代から続く老舗酒蔵「星野家」の私邸庭園、つまり「豪商の庭」なのです。普段は関西(京都・大阪)を中心に活動している私ですが、東北の地にこれほど見事なわびさびの空間が残されていることに、造園家としても大きな刺激を受けました。
樹木医ならではの視点を交えながら、可月亭庭園の深掘りレポートをお届けします。
会津三庭園の1つ「可月亭庭園」とは?

やってきました福島県会津若松市。
ここは、会津3庭園と言われる庭園の1つ可月亭庭園です。
この庭の原型は鎌倉時代から桃山時代にあったとされて、約1,000坪の敷地を誇る「池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)・鑑賞式山水庭」です。
最大の特徴は、江戸幕府のお抱え庭師であり、小堀遠州の流れを汲む遠州流の作庭家・目黒浄定(めぐろ じょうてい)によって手掛けられた点にあります。浄定は会津藩主・保科正之に招かれて「御薬園」の大改造を行った人物ですが、その巨匠が民間(星野家)のために情熱を注いだプライベートな名園が、この可月亭なのです。
戊辰戦争の激しい戦火を奇跡的に免れた貴重な遺構であり、現在は「可月亭庭園美術館」として、歴史的な美術品とともにその美しい空間が一般に公開されています。
会津3庭園
ちなみに会津3庭園というのは、この可月亭庭園と御薬園と攬勝亭(らんしょうてい)です。ところが、攬勝亭は住宅地になってしまって、今は見れなくなっているそうです。誰か攬勝亭を維持してくれる方はいないのでしょうか?貴重な庭園がなくなっていくのは寂しいことです。この可月亭庭園も維持、保存していくのが大変であるとオーナーさんが話されていました。歴史ある貴重な庭園に皆さんが関心をしめしていただき、みんなで保存していけたらと思います。
| 庭園名 | 格付け・形式 | 主な特徴と背景 |
| 御薬園 (会津松平氏庭園) | 国指定名勝 池泉回遊式大名庭園 | 会津藩主の別邸。中央に巨大な「心字の池」を配し、藩の薬草園としても機能した、三名園の筆頭。 |
| 可月亭庭園 (可月亭庭園美術館) | 国登録有形文化財(建物) 池泉回遊式・鑑賞式山水庭 | 豪商・星野家の私邸庭園。目黒浄定作。巨石(石組)や樹齢を重ねた五葉松、苔むした灯籠が静謐な空間を作る。 |
| 攬勝亭(らんしょうてい) | 格式高い池泉庭園 | 御薬園・可月亭と並ぶ三名園の一つ。近年は個人所有による維持の難しさから取り壊しの危機に瀕し、保存活動が行われている。 |
可月亭庭園美術館
先ずは、可月亭庭園美術館を見てみましょう!
そこには庭園と美術館、カフェがあります。

美術館の絵はお庭を見に来たという本題を忘れるほどの絵が並んでいます。東洋の要素が入った照明も素晴らしかったです。

カフェからは、

このように可月亭庭園を眺めながらおいしい飲み物とケーキが楽しめます。
可月亭庭園
可月亭庭園は大小2つの築山と心字池、流れなどから構成されています。

この石は池沿いに据えられた礼拝石です。

この礼拝石からの眺めです。護岸を低く組んでいるのが特徴です。庭にさらに遠くを意識させるような感じもします。

この礼拝石の眺めの遥か向こうが気になりました。
礼拝石の向こう
地図で調べると、この方向の向こうには日光東照宮があります。
日光東照宮というのは、江戸幕府を開いた徳川家康が神様としてまつられています。このお庭は会津藩が作られたお庭。会津のお殿様や松平容保(会津戦争のころのお殿様)はこの礼拝石に乗られ、遥か日光東照宮に手お合わせられたのでしょうか?
2つの滝の対比

これがお庭正面の流れです。奥に遠山石を置くなどして、非常に遠近感、長い流れを演出しているようです。

右側にある流れです。滝組がされていて先ほどの緩やかな流れとは違います。

このようにかわいい灯篭がたくさんありました。かつてのオーナーのコレクションだそうです。
私はこの月の灯篭が気に入りました。
皮だけで生きる松
驚いたのはこの松です。
写真ではわかりにくいですが、手前に葉っぱが写っていますが、根本は写真の奥のほうにあります。幹が延々と這ってきて葉っぱをつけています。

こんな感じで皮だけの幹で、根っこと葉っぱをつないでいます。

なんとも凄い姿ですね。
松をはじめ樹木は幹の中心部分は木を立たせるための支えの役割をしていて、生きるための活動はしていません。生きるための生理活動は皮に近い部分でしています。
この写真の松は、幹部分は地に這っているため、木を支える必要はなく、もっぱら生きるための生理活動をしていればいい状態になっています。
とは言え、松の生きる強さを感じます。長く維持された歴史あるお庭だからの光景です。
樹木医・造園家が見る「可月亭庭園」3つの見どころ
1. 年月を刻んだ樹木たちと「わびさび」の調和
庭園に一歩足を踏み入れると、樹齢を重ねた五葉松やモミジ、瑞々しい苔が出迎えてくれます。 樹木医として特に注目したのは、その「仕立て」と「維持の技術」です。東北の厳しい冬(雪)を何百年も乗り越えてきた樹木たちは、幹のうねりや枝振りに圧倒的な生命力を宿しています。

豪快な石組の間に配置された植栽のバランスは見事です。派手さはありませんが、引き算の美学である「わびさび」が表現されています。
2. 室内から鑑賞するための「客座敷」
現在、敷地内にある大正〜昭和初期の意匠を残す「客座敷」は、国の登録有形文化財に指定されています。 この座敷に腰を下ろして庭を眺めると、素晴らしい仕掛けに気づきます。

「座った状態の目線」で庭園が最も美しく切り取られるようになっているのです。まるで一幅の絵画を眺めているような贅沢な時間を味わえます。
3. 美術館の「土蔵」と楽しむ文化財の粋
敷地内の土蔵も登録有形文化財になっており、現在は星野家に伝わる美術品や古文書を展示するスペースになっています。

豪商が育んできた高い文化度を感じながら、歴史と自然が一体となった空間を体験できます。また、現在は客間で抹茶や珈琲をいただけるカフェも併設されており、五感で庭園美を堪能できます。
樹木医 松井裕之のまとめ
今回、可月亭庭園を訪れて強く感じたのは、人の手による作庭の美しさはもちろん、それを何百年も守り、育ててきた人々の情熱です。
庭園は造って終わりではなく、日々の手入れ、そして樹木の健康管理があってこそ、その美しさが後世へと紡がれていきます。東北の厳しい気候に耐え抜いてきた樹木たちの力強さと、庭園を維持し改良してきた職人さんの努力を肌で感じることができました。またこれからも未来にこのお庭をつないでいって欲しいと思いました。
会津を訪れる際は、ぜひ大名庭園の「御薬園」と、この豪商の庭「可月亭」をセットで巡り、楽しんでみてください。
可月亭庭園美術館(旧星野氏庭園)
- 所在地:福島県会津若松市材木町1丁目6-11
- 特徴:目黒浄定作庭、国登録有形文化財(客座敷・土蔵)
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 お庭の樹木の元気がない、剪定や管理に悩んでいる…といったご相談がございましたら、いつでも「樹木医 松井裕之」までお気軽にお声がけください!
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