名古屋城を訪れた際、天守閣や本丸御殿だけで通り過ぎてしまっていませんか?

実は、二之丸庭園は国の「名勝」にも指定されている、日本最大級の藩主所用庭園(大名庭園)です。広大な敷地に配された巨石や情緒あふれる植栽には、当時の意匠と樹木のドラマが今も色濃く残されています。

今回は、樹木医である松井が実際に二之丸庭園を歩き、見過ごされがちな名木の見どころや、樹木医学的な視点から見た庭園の魅力を分かりやすく解説します。

散策が10倍面白くなる見学ポイントをまとめましたので、名古屋城散策の参考にぜひご覧ください。

名古屋城

名古屋城です。

名古屋城

100名城の1つで、なんといっても特別史跡の名古屋城。

名古屋城の深いお堀

お堀もすごく深いですね。江戸幕府の威力。力強いです。加藤清正が頑張って巨石を運び積まれました。

こんな堀に落ちると、私だったら登れません。

名古屋城 二之丸庭園

名古屋城 二之丸庭園

名古屋城二の丸庭園。国の名勝です。

名古屋城の二之丸庭園は、江戸後期に改修された 回遊式庭園 で、 石組・築山・枯池の配置に高度な技術が使われています。

特に、

  • 三尊手法の石組
  • 深い枯池の構造
  • 二子山(築山)の形状 は、江戸後期の庭園文化を象徴する要素です。

庭園の歴史

二之丸庭園は、江戸初期に上田宋箇という千利休のお弟子さんが作庭され、その後 江戸後期に大規模な改修 が行われ回遊式庭園になりました。 当時の力強い作庭技術が色濃く残っており、石組の配置や築山の形状に職人の意図が読み取れます。

三尊手法の石組

滝組と護岸の石組み

三尊手法の石組みをメインにし石が組まれています。右側に滝組、そして護岸の石組みがあります。

三尊手法とは、

  • 主石(中央)
  • 副石(左右) を三尊仏に見立てて配置する技法です。

二之丸庭園では、主石がしっかりと立ち、左右の副石が低く添えられ、 視線誘導と庭園の中心性を生む構造 になっています。

立たせた石組みで勢いを表現

全体的に立たせている石組みで勢いを感じます。特に後ろの右の方ののけぞりながら尖った立石は特に「すごい勢い」です。

栄螺山(さざえやま)

さざえ山と滝組

貝のサザエ(螺旋形)のように、山頂へ向かって園路がぐるぐると「らせん状」に巻き上がっている形状からその名が付けられました。(全国の大名庭園や回遊式庭園でも、頂上からの眺望を楽しむためのらせん状の築山に「栄螺山」と名付ける例が見られます。)

庭園内を巡る回遊ルートの中で、少し小高くなったこの山をらせん状に登ることで、視点の高さが変わり、庭園全体や周囲の景観を見渡す展望ポイントとしての役割を果たしていました。

堀の残土を使って栄螺山や権現山(ごんげんやま)、笹巻山といった小高い山を盛ることで、以下の効果を生み出しました。

  • 景観の遠近感:平坦な敷地に高低差をつくり、奥深さを演出する。
  • 視点の変化:栄螺山のようにらせん状に登ることで、庭園を上から見下ろす展望ポイントを作る。
  • 背景の仕切り:背後に高低差を作ることで、庭園の外側にある余計な視界を遮る。

栄螺山の真ん中には枯滝組が組まれています。

■ 深い枯池の構造

名古屋城 二之丸庭園

枯池ですが、このように物凄く深く掘っています。ダイナミックな景色になります。

あの深いお堀りと同様、この深い枯池も権力の凄さを連想させます。

こんな深い枯池のある庭園は珍しいと思います。

植栽がうまく計算されているようで、枯池の豪快さを際立たせています。

枯池は通常浅いことが多いのですが、二之丸庭園の枯池は 深さが強調されている のが特徴です。

理由としては、

  • 水がなくても「水景の奥行き」を表現するため
  • 築山との高低差を強調するため
  • 石組の立体感を増すため

以上の3つの効果に植栽が役立っていることも注目しておきたいです。

二子山(築山)の形状

二子山(築山)

二子山という名前の築山です。

よく見ると亀でした。これが顔のアップ。

二子山は亀の山

大迫力の亀ですね。

二子山は二つの山を重ねたような形状で、 庭園全体の「背景」として機能しています。

築山の高さと角度は、

  • 主石とのバランス
  • 枯池との高低差
  • 回遊時の視線誘導

を計算して作られており、江戸後期の庭園技術の巧みさが見られます。

権威と繊細さを示す植栽

権威の象徴の蘇鉄と松

蘇鉄(ソテツ)が持つ格式|時代と思想を象徴する「特徴的な樹種」

初代藩主・徳川義直の時代、二之丸庭園には儒教思想を取り入れた中国風(唐様)の意匠や建物が配されていました。その際、異国情緒と格式を象徴する植栽として多用されたのが「ソテツ」です。安土桃山から江戸初期の大名庭園で好まれた技法であり、荒々しい幹の造形と南国風の葉群が、豪壮な石組とマッチして権威を示しています。

骨格を作るクロマツと「彩り」の対比

城郭庭園の主骨格(ベース)として、土塁や築山の上など高所を中心に力強いクロマツが配されています。この常緑の深い緑を背景にしつつ、イロハモミジやカエデ類、サクラ、ウメ、ツバキなどを挿し込むことで、新緑・花・紅葉という季節ごとの見え方の変化を鮮明に浮き彫りにしています。

権威と繊細さを表現する植栽

蘇鉄やクロマツを使うことで権威を強調する一方、イロハモミジやサクラなどで

季節の繊細な変化も取り入れようとしています。

樹木医 松井裕之のまとめ

二之丸庭園城・御殿と一体化し、石組と高低差の人工美で魅せる武家の庭と言ます。

ソテツの植栽にも見られますが、南国風・異国情緒をもつソテツを豪壮な石組の傍らに配し、安土桃山〜江戸初期の大名庭園に特有の異国趣味と権威と格式を際立たせています。

また、全体の植栽の使い方として、余分な樹木を減らし、巨石・滝石組の立体感をむき出しにして見せる「石を引き立てる植栽」が特徴で、権威と格式を強調しています。

一方で、イロハモミジやカエデ類、サクラ、ウメ、ツバキなどを使うことで、権威・格式の中にも季節感や柔らかさ、繊細さも味わえる庭園となっている。

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参考ホームページ

樹木医のホームページ⇒http://www.matui-jyumokui.com/